バイオエコまるくん

「混ぜればゴミ、分ければ資源」と云われて15年ほどになります。10年ほど前、環境分野で初のノーベル平和賞を受賞したケニアのワンガリー・マルタイから日本語で「もったいない」という言葉が飛び出し、3つのR・reduce(減量)、reuse(再使用)、recycle(再利用)推進の合言葉になりました。そして3.11、原発事故を経て、自然エネルギー、地域分散型エネルギーの必要性が喫緊の課題となり、太陽光、風力、小水力、地熱など様々な自然エネルギーが動き出しました。その中で一番遅れているのが、生ゴミ、家畜フンなどを原料とするバイオガス(メタンガス)エネルギーです。

本来「もったいない」精神と3R推進に最も有効な手段であるはずのバイオマスエネルギーが、どうして普及していないのでしょうか?それは割に合わない、費用対効果が見込めないコストの高さにありました。コスト高の最大の要因は、エネルギーを取り出す際に必ず発生する消化液と呼ばれる汚濁度の高い悪臭のする廃液の処理に、多大なコストを要したからです。


そこで我々は、農水省「緑と水プロジェクト」の補助金を活用し、秋田県立大学構内に「地域分散型低コストバイオエネルギーの開発」事業を立ち上げ、同大学生物資源学部・日高伸教授と共同研究で、低コストメタン発酵技術の開発に取り組んできました。

そして高度処理花壇槽を用いて

  1. 低コスト消化液処理
  2. 消化液無臭化による液肥利用
  3. 消化液からの固型肥料の回収

などに大きな成果をあげ、さらにバイオガスの

  1. 低コスト電気変換
  2. バイオガス成分の純度化

など次々に成果をあげ、バイオマスエネルギーの高性能・低コスト化が実現しました。バイオガスは安定した安全なガスであり、バイオ発酵槽を地下構造物とすることなどにより、震災時に電気やガスが止まっても自給自足が可能になります。

では具体的にどれぐらいガスが利用できるかというと、600人が1日に出す生ゴミで、1世帯が1日に使用する電気を賄えます。このガスをボイラーで使用すれば、4世帯分の給湯を賄うこともできます。同じように、牛10頭が1日に出すフンでも1世帯1日分の電気を賄えます。

一方で、我々が何の気なしに使っている火力発電などの電気ですが、1世帯1年分の電気を発電するために、なんと牛乳パック100万本分もCO2を排出しています。灯油に置き換えると、ドラム缶4本分も使用しているのです。

メタン発酵は、ただ生ゴミなどの資源を有効利用するだけでなく、地球環境保全に、大いに力を発揮してくれることでしょう。

メタン発酵Q&A

Q1 そもそもメタン発酵って何?
A1 メタン発酵とは、生ゴミ、牛糞などの廃棄物を酸素がない状態(嫌気状態)に密閉して、微生物の力で発酵させることです。発酵によってメタンガスが発生するので回収し、ガスをボイラーやガスコンロで使用する、あるいは発電して有効利用できます。
Q2 メタン発酵の利点は?
A2 生ゴミ、家畜排泄物、下水汚泥など処理費用のかかる「嫌われもの」から、エネルギーが回収できることです。またソーラー発電や風力発電は自然条件に左右されますが、メタン発酵は人間が生活していく上で、必ず原材料(生ゴミなど)が確保できます。
Q3 しかし、メタン発酵は、ソーラー発電や風力発電に比べると注目度が低いと思われるがその理由は?
A3 端的に言うとコストが高いことです。イニシャルコストに関しては、処理するごみが1トン当たり、焼却炉(溶融炉)では5000万円ほどですが、メタン発酵施設の場合も同程度必要となります。さらにランニングコストに問題があります。

ソーラーや風力では運転時に人間を必要としませんが、メタン発酵では人間が必要となります。(逆に言えば雇用が発生するのでいいことかも知れません)。

また、ソーラーや風力は運転に伴う排出物はゼロですが、メタン発酵では消化液が排出されます。従来技術ではその処理に大きなコストがかかっていました。そのことがメタン発酵普及の一番の足かせとなっています。(詳細はQ5で説明します。)

Q4 消化液とは具体的にどのようなものか?
A4 消化液とはメタン発酵の過程で排出される廃液のことです。排出量は原材料投入量の2倍、例えば1日200㎏の生ゴミを投入すると1日400㎏の消化液が排出されます。その性状はドロドロした粘性の高いスラリー状で、またメタン発酵は完全閉鎖系で行われる嫌気発酵であるため施設そのものは無臭ですが、メタン発酵タンク内の消化液の水質は、概ね

BOD 2,000~6,000mg/l
全窒素 1,500~3,500mg/l
全リン 200~1,000mg/l

と非常に高い汚濁度となります。(原材料の種類により大きく異なります) また全窒素の大部分がアンモニア態窒素のため、悪臭も強く、環境負荷が極めて大きいのが特長です。

Q5 消化液の処理は通常どのように行われているのか?
A5 方法は2種類あります。
1つは、環境排水基準内に浄化して放流します。尚、環境排水基準値は以下の通りです。

BOD 120mg/l以下
全窒素 60mg/l以下
全リン 8mg/l以下

消化液の浄化には、その汚濁度が非常に高いので処理水量は少なくても下水処理場なみの施設が必要となります。さらに全窒素を環境排水基準内にするために膜処理も併用されます。そのためイニシャルコストでもメタン発酵全施設建設費の2/5程度が浄化設備にあてられます。ランニングコストではブロア―電気代、凝集材などの薬品代、膜の取り替えなど大きな負担となります。

もう一つの方法は、アンモニア臭はするものの消化液をそのまま液肥として利用しています。高濃度のため利用できる作物は、水稲やイネ科の牧草に向いています。但し、悪臭が強く粘性も高いので使い勝手が悪く、人家に近い所では悪臭問題になりかねません。また、液肥は通常、元肥追肥として年2回散布しますが、消化液は毎日排出されますので半年間貯留する膨大なタンクが必要となります。
参考までに水稲に対する消化液の散布量(アンモニア肥料換算)は元肥として10アール当たり、8~10m3といわれています。

Q6 そんなに大変ならメタン発酵する意味あるの?
A6 これまで述べてきたように、消化液の処理がメタン発酵普及の足かせとなっていました。しかし同時に、その消化液はとても肥料価値が高いものです。肥料を輸入に頼っている日本にとっては、自分たちが出した廃棄物からエネルギーを回収しながら、良質な肥料を作るということの重要性は言うまでもありません。まさに肥料の地産地消といえます。今後、こうしたメタン発酵を利用した液肥利用が農水省を中心に積極的に取り組まれます。とくに小規模、地域分散型のメタン発酵が発展していくと思われます。

我々も数年前からメタン発酵に取り組んできました。そして開発に成功したのが、必要なだけ消化液を液肥として使い、余った消化液は、自然の力を利用した低コスト浄化システムで排水処理をする方法です。これを「バイオ・エコまるくん」と名付けました。

Q7 どんな浄化システム?
A7 そもそも消化液は、窒素やリンを豊富に含み、流動性もあるので、使いこなせば即効性の高い良質な液肥として利用できます。さらに、作物のうまみが増すという報告もありますので、使わない手はありません。

しかし、毎日生ゴミを投入すれば、毎日消化液が発生します。液肥を使わない日は消化液が余ってしまいます。そんなときは土壌、植物、微生物を使った低コスト浄化システムで排水処理をします。

この浄化システムでは、独自技術により液肥の窒素濃度をコントロールすることが可能となりました。栄養豊富な消化液をそのまま元肥として使うもよし、浄化システムで悪臭を除去して追肥(主に窒素肥料)として使うもよし、あるいは放流できるレベルまで浄化してしまうもよし、様々な利用方法があります。

このシステムでも凝集剤を使うので、汚泥が発生します(ただし、汚泥は概ね99%が水分ですので、汚泥発生量はごく少量です)。この汚泥は堆肥化することが可能ですので、もともと廃棄物だった原材料が、全て循環、再利用されます。

ゴミを焼却すれば二酸化炭素が発生しますが、メタン発酵すれば二酸化炭素発生を低減できます。また処分されるはずだったゴミが減り、それが資源として有効に利用されるのです。これらのことから、「バイオ・エコまるくん」は地球環境にたいへん優しいシステムとなります。

浄化液を浄化する手順

メタン発酵の仕組み

具体ケース — 新庄村でメタン発酵

では、新庄村でメタン発酵を行うとすると、どういった規模の設備が必要かを考えます。

新庄村の人口は993人(平成26年)なので、約1000人とします。1人当たり1日の生ゴミ排出量は200g程度といわれていますので、1000人で200kgです。

ですので、1日のメタン発酵原材料は200kgと仮定します。
もちろん全員から生ゴミを回収するのは難しいでしょうが、幸い新庄村には道の駅もあり、また乳用牛の酪農なども行われていますので、原材料(生ゴミ、牛糞)の確保は可能と思われます。

200kgの原料と、同量の水分を混ぜて400kgのスラリーとし、発酵槽に投入します。発酵槽では約25日間、原材料を滞留させます。
つまり25日分のスラリー10t、余裕を見て12t程度のメタン発酵槽が必要となります。

このとき(原材料により変動しますが)、1日当たり10m3程度のバイオガスが発生します。70%程度がメタンガスなので、メタンガスは1日当たり7m3程度発生します。

7m3のメタンガスがどの程度のエネルギー源になるかというと、

ボイラーで利用する場合

メタンガスによる発熱量

メタンガス発熱量=9,500 kcal/Nm3なので、
9,500 kcal/Nm3 × 7Nm3/日 = 66,500 kcal/日

1世帯(3人/世帯)あたりの給湯消費量にかかる熱量(20oC⇒40oC)は、

1世帯あたりの給湯消費量 433.8 kg
433.8 kg ×(40oC – 20oC) = 8,676 kcal/世帯

以上より、生ごみ1日分から発生するメタンガスで賄える世帯数は、

66,500 kcal/日 ÷ 8,676 kcal/世帯 = 7~8世帯

電気で利用する場合

バイオガス1 Nm3の発電量 2.1 kWh/Nm3

* JFEバイオガスエンジン発電システム VGFシリーズ性能表

生ごみ1日分の発電量

2.1 kWh/Nm3  ×  10 Nm3/日 = 21 kWh/日

1世帯あたりの1日分の電気使用量 13.2 kWh/世帯・日

生ごみ1日分で賄える世帯数

21 kWh/日 ÷ 13.2 kWh/世帯・日 = 1~2世帯

となります。

これを重油に換算すると、1日の生ゴミ200kgから発生するメタンガス7m3は、重油7kg分のエネルギーに相当します。つまり、生ゴミ約30kgが、重油1kg分のエネルギーを持っていることになります。

消化液の有効利用

では次に、メタンガスとともに発生する消化液の有効利用を考えます。

生ゴミを1日200kg投入するので、消化液が1日当たり200kg発生します。
つまり年間で約70m3の消化液です。

新庄村では特産「ひめの餅」が有名ですので、水稲での利用で考えますと、(消化液は原液そのままでは豊富な窒素を含むため、ひめの餅に利用するには、浄化システムで窒素濃度をコントロールしてからの方が良いと思われます。)
水稲の場合、10アール当たり8-10m3の消化液を元肥として使うと良いので、年間70m3の消化液なら、70アールの水稲の元肥になります。

新庄村では50-100アールの耕地の農家さんが最も多いそうですので、ちょうど1件分ぐらいです。次に多い50アール以下の耕地規模の農家さんなら、2-3件分です。
これなら浄化システムを使用するまでもなく、消化液を全て液肥利用できそうです。
また、浄化システムを利用し、悪臭のない液肥として追肥利用することも可能です。

昨今、農産物価格の低迷により困窮している農家が多く、新庄村でも問題となっていると思われます。しかし同時に、旭川の源流域という優位な立地条件で、安心、安全な農作物を生産できるのも新庄村の魅力です。
さらに、消化液という安心、安全な肥料による有機栽培で、さらなる高付加価値型の農業を展開することは、新庄村の活性化の一助となるのではないでしょうか。